病院などの医療機関で活用されるレントゲン撮影やCTスキャン。
骨折や病気を検査するのに使われることが多いですが、なぜ体の外から骨や内臓が撮影できるのか不思議ですよね。
今回は、X線の歴史をお話ししようかと思います。
X線発見の土台となった「陰極線」の研究とX線の発見
X線を発見したのは、ドイツ人物理学者ウィルヘルム・レントゲンです。
陰極線(ブラウン管の原理)の実験は1800年代中ごろからヨーロッパ各地の大学で盛んに研究されていました。
1895年11月8日、暗室で真空管を使った実験中に、蛍光板(白金シアン化バリウム塗布)が発光することに気づいた彼は、この光を未知の光線 ≪X線≫ と名づけ、自分の見た不思議な現象を理解するために、それから数週間実験に取り組みました。

X線発見の衝撃
目に見えないこの放射線は、目に見える光を通さない紙や木は透過しますが、人の骨や鉛に対しては不透過であることが分かりました。
すなわち、放電管と写真乾板(今でいうフィルム)の間に不透過の物質(固いもの)を置くと、その影が写ったのです。
試しに妻の手を写真乾板の上に置き、15分間照射したところ、手の骨と金属の結婚指輪だけが写った写真が撮れました。
この研究結果を論文にまとめたレントゲンは、その年の12月28日にビュルツブルグ物理医学会の会報に掲載されました。

1896年の元日に、ヨーロッパの有力な物理学者に論文を送ります。
その論文に添えられたのが、妻の手のレントゲン写真でした。
この写真は論文よりはるかに強い印象を与え、1月5日の新聞で紹介されます。
この新聞報道により彼の業績は瞬く間に世界中に広まりました。
医療への応用
X線の発生装置は簡単に作ることができたので、骨折や骨疾患の強力な診断装置として、発見数ヵ月後には普及し、一般人向けに「骨の記念撮影」をする業者まで現れます。
1890年代後半にはバリウムやヨードを造影剤として用いて、食道、胃、大腸などの消化器だけでなく、尿路や大動脈の造影検査も行われるようになります。
また、診断だけではなく、癌の治療への応用も1899年には始まりました。
一方、X線の有害作用は早くから指摘され、1896年には皮膚に潰瘍ができることが証明され、1902年にはX線による発癌も報告されました。
X線の活用は20世紀後半に飛躍的な進歩を遂げます。
1972年にはCTスキャンにより初めて人間の脳の内部を断層像として可視化できるようになりました。
その後も装置の改良とコンピュータの進歩とともに画像は鮮明になり、3D画像も作成することが可能となり診断精度が上がりました。
医療以外の分野でも、X線は利用されています。
たとえばX線の高い透過性を利用して様々な製品の内部の検査を行って品質管理を行っています。
その後、レントゲンは医学とは無縁の研究を続けます。
医学史上の大発見をしたレントゲンはあくまでも物理学者でした。
レントゲンが現代のレントゲン写真を見たらどんな感想が出るのでしょうか?